学校ルール 子ども苦痛 金沢の元教諭提起「もっと伸び伸びして」

~北陸中日新聞 記事より~ 

 

 

「登下校時 校舎にあいさつ」 「給食や掃除の時間 無言で」

 「休み時間中に廊下でおしゃべりしちゃだめ」「発言には『同じです』

などと反応しなければならない」-。

 

 

そんな決まりだらけの学校に警鐘を鳴らす本「学校がたいへんだ!-道徳教科化がやってきた-」(いしかわ県民教育文化センター)が刊行された。執筆者は金沢市の元小学校教諭、安原昭二さん(64)。「学校が子どもたちの居場所ではなく、苦痛の場になっていないか」と問い掛ける。(小室亜希子)

 

二年ほど前、金沢市内の小学校を学校公開日に訪れ、驚いた。休み時間なのに静かな廊下。児童に聞くと「短い休み時間は、他のクラスの迷惑になるから、おしゃべり禁止なの」と教えてくれた。

 

 「休み時間は次の授業の準備の時間。トイレや手洗い以外は静かに待つ。そんな考えに基づいているようです」と安原さん。現職の時も首をかしげるような決まりはあったが、「この数年でどんどんひどくなっている」と感じている。

 

 例えば「返事は『はい』ではなく『はいっ』と元気よく」「全員一回以上発言する」「五分前行動、二分前着席」「特別教室には整列して移動する」「無言で給食、掃除」など。

 

 能登地方のある小学校では、玄関前にあるマットの上で朝は「よろしくお願いします」、帰りは「ありがとうございます」と校舎に頭を下げなければならないと教員仲間から聞いた。

 

 こうした学習態度や学校生活の細かいルールは「○○小スタンダード」と呼ばれ、全国の学校に広がる。本では安原さんが石川県内各地で見聞きした「スタンダード」を紹介し、いかに窮屈かを子ども目線で描く。

 

 安原さんは「全国学力テストで学校間に競争関係が持ち込まれ、目に見え、すぐに結果に出るものを求める動きが強まっている」と背景を指摘する。

 

 「押しつけのルールは、まじめな子ほど従順であろうと自己を抑制し、できない子はつらくなって追い詰められる」と懸念し、不登校が増え続ける一因とみる。

 

 本では昨年度から小中学校で相次いで始まった道徳の教科化も危ぶむ。教科書には一定の価値観を押しつけるような教材が見受けられ、さらに評価(記述式)が加わったことで、「子どもたちが本音を言わなくなる」と恐れるためだ。

 

 安原さんは「このままでは子どもの心が学校や先生からだんだん離れていく。『もっと伸び伸びしていい』と、地域から声を届け、学校を変える力になってほしい」と訴えている。

 

 

 本はA4判、八十ページ。一冊五百円。問い合わせは安原さんが所長を務める、いしかわ県民教育文化センター=電076(223)8415、ファクス076(222)8415=へ。